てんかん支援拠点病院の理念

てんかん支援拠点病院の主な役割

  • てんかん治療医療連携協議会の設置・運営
  • てんかん患者及びその家族への専門的な相談支援・治療
  • 県内の医療機関等への助言・指導
  • 関係機関との連携・調整
  • 医療従事者等に対する研修実施
  • 患者・家族、地域住民等への普及啓発
  • てんかん診療支援コーディネーター
    (医療・福祉に関する国家資格者)の配置
  • 全国拠点機関との連携

てんかん支援拠点病院を中心として、てんかん患者を適切な診療につなげるための各診療科間・各医療機関間の連携を強化するほか、医療機関等の職員の専門性を高めるための研修や、てんかんへの正しい理解を深めるための情報発信等を実施することにより、県内におけるてんかん診療連携体制の整備を進めてまいります。

てんかんは、「突然けいれんして意識を失う」、「けいれんしなくても意識だけを失う」などの「てんかん発作」を繰り返し起こす病気で、約100人に1人が発症する有病率の高い疾患で、乳幼児から高齢者までいずれの年齢でも発症します。患者さんの数は全国で約100万人、福岡県下で約4万人と推計されています。
診断のためには詳細な問診、神経画像、脳波が必須で、てんかんに類似した疾患、例えば、失神、心因性非てんかん性発作、睡眠時随伴症、不随意運動などとの鑑別が必要です。また、病因も、遺伝的素因、大脳皮質形成異常、感染症、代謝性疾患、免疫性疾患、変性疾患など多岐にわたり、うつや不安症などの精神疾患、神経発達障害、認知症などとの併存が多いことも特徴です

的確な診断のためには数日間にわたり脳波と症状を記録する長時間ビデオ脳波モニタリングが必要なことがあります。てんかん患者さんの約3割が抗てんかん発作薬の効きにくい薬剤抵抗性てんかんですが、薬剤抵抗性てんかんには手術が有効な場合があります。小児発症てんかんの中には自然に発作が消失する良好な経過をとる症候群がある一方、発作自体が脳症を進行させる症候群もあります。高齢発症のてんかんは認知症との鑑別が必要な場合があります。併存する精神症状に対し専門的な治療が必要なことがあります。小児科、脳神経内科、脳神経外科、精神神経科等の診療科が、それぞれの専門性に基づき診断と治療を担いますが、年齢によって最適な治療が異なるため、診療科間の連携が重要です。

てんかんをとりまく問題

てんかんがあることで、就学・就労に困難が生じて経済的困窮に陥ったり、未だ存在するてんかんに対する偏見のために日常生活に困難が生じたりします。そういった社会的困難があるにもかかわらず、てんかん患者さんが利用できる精神保健福祉制度に対する情報が、地域や施設によっては十分に知られていなかったり、医療従事者自身がてんかんに対しての理解が乏しかったりする現状があります。そのため、てんかんに関する情報共有や、医療従事者の資質向上、地域差の解消等が課題となっています。
てんかんへの理解不足や情報不足の地域差は世界的にも問題になっており、WHO(世界保健機関)では IGAP(領域横断的なてんかんと神経疾患の世界的行動指針、Intersectoral global action plan on epilepsy and other neurological disorders)を2022年5月に採択しました。これは、2032年までの10年間で、てんかん患者さんの90%がてんかんは治療可能な病気であることを知り、80%が適切な抗てんかん発作薬を享受することができ、70%が良好な発作コントロールを持つことを目指す、という指針です。

厚生労働省では2016年より各都道府県において、てんかん診療の均てん化を目指し、てんかん診療を専門的に行う医療機関のうち、県内1か所を「てんかん支援拠点病院」として指定し、専門的な相談支援や医療機関間の連携、地域における普及啓発等の体制を充実させ、適切な医療につながる地域の実現を目指す「てんかん地域診療連携体制整備事業」を推進しています。福岡県では、2023年1月23日に九州大学病院がこの「てんかん支援拠点病院」に指定されました。

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